Q.父が亡くなりました。父は不動産や預貯金などの財産を持っていましたが,負債もかなりあったようであり,トータルするとおそらく負債のほうが多いと思います。プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐということはできますか。

  限定承認(民法922条)という方法があります。限定承認とは,相続人がプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという制度です。プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からないというときに有効です。

 財産調査の結果,マイナスの財産のほうがプラスの財産より多ければ,プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継げば足ります。一方,プラスの財産のほうがマイナスの財産より多ければ,相続人はマイナスの財産を上回るプラスの財産の部分を取得することができます。

 しかし,限定承認はあまり利用されていません。3カ月以内に財産目録を調整して,相続人全員で家庭裁判所に限定承認の申述をする必要があり,さらに,債権者に債権の申出を催告するなどの手続きをし,破産の際の破産管財人のように清算業務を行う必要があるからです。